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コンピュータが本来持つ限界のなさを阻む者はきっと・・・

もしかしたらビットコインは新しい時代の主要な通貨になるかも。と思っていたが、考えなおした。

ビットコインはベアラー型の通貨であり価値を保証する政府も必要としないと聞いて「これこそ未来の通貨だ」と思った。(あとに説明するように実際はベアラー型ではないみたいだけど。)
例えば現金は(それ以上に株券は)持っている人がそれを行使できる。受け取る方としてはいちいち政府に問い合わせたり、信販会社のサーバに問い合わせたりする必要は無い。これがベアラー(持っている人)型。このようにコントロールする中心のなさという点はコンピュータ利用のこれまでの歴史を正しく発展させる方向だと思った。
またキャッシュカードなどと比べてトランザクションコストが大幅に低いらしい。例の1円とかの支払いはキャッシュカードでは難しいらしいという問題ね。

しかし、ビットコインは総発行量に限界がある。これはコンピュータの限界とは何の関係もない制約だ。 最初は数学の定理とかで絶対的に上限が定まっているのかと思って興奮したがそんな事はなかった。既存ノードたちが発行量についての規約(サトシ論文)に反するような事をする新規ノードを許さないというだけだと思う。これ自体はむしろ必要な事で発行量を制限しなければ制御不能なインフレになって価値が暴落してしまう。しかしだ、そういう本質的でない制約を持ち込むと、他の外に作られたネットワークに取って代わられる危険があるのでは無いかと漠然とした不安を感じていた。

そこへ、中里さんのこの記事を読んで、ビットコインは長期的にはダメだろうと考える事になった。ビットコインは本来的な限度の無さというコンピュータの本性に反しているからだ。

例えばコンピュータのなかではコピーの回数には制限が無い。ハードウェアの仕組みを知っている人からするとむしろコピーこそコンピュータの動作原理であるくらいだ。それを制約する方が無理がある。だからDRMなどを実現する方がずっとめんどくさい。このようにコピーの限度の無さというのがコンピュータの本来の性質だ。
IPv4のアドレスの有限性を所与の物として、それを市場取引で分配しようと提案した経済学者もいたけど、世の中はそんな風になる必要は無かった。IPv4に見るような通信のIDの数の上限もコンピュータの本来の性質ではない。たまたまだ。そんな制約に我々が縛られる必要はないのだ。
中里さんが例示したセカンドライフの中の不動産というのもダメだった。仮想空間のなかでの土地が有限でなければならない理由など確かにない。

DRMなどまだ決着がついてないものもあるにせよ、コンピュータの本来の限界と関係ない限界で我々を縛ろうとする試みは概ね失敗する運命にあるようだ。


さて、ビットコインは何なのか。現金や金のように物としての存在自体(あるいは複製の難しさ)が価値を保証するわけではない。私が理解したところでは、どちらかと言うとビットコインは分散型の帳簿システムだった。例えると単一サーバがファイルを配布するシステムに対してWinnyが分散されたネットワークとして全体として落ちる事の無いパフォーマンスのよいファイルサーバを構成していたような物。同様に、これまでのカードや銀行のシステムは中心があってつじつまのあう帳簿システムを提供していたのに対して、ビットコインは近隣のノードとやり取りするノードによるネットワークが全体としてだます事が難しいコンシステントな帳簿システムを提供しているということ。

ビットコインが(金のようなコピー不可能な実態を作り出すものではなく)分散型の帳簿システムであるならばトランザクションコストの低さなどの利点は他のコンシステントな帳簿システムのすべてにも利用可能である。コンシステンシとは誰かが(お金などを)あげたら相手の増えた分だけきっちり減るという事だ。帳簿システムのコンシステンシを中心に出来上がっているものは、例えばキャッシュカード会社、銀行、証券会社である。また、ネット上の(マイクロ)ペイメントの会社もみなそうだ。

これらの企業の中で、分散型の帳簿システムを採用したところに今後注目するべきだろう。それによりトランザクションコストは大幅に下がり他の企業に対する競争の優位性になる。新しい時代のお金の使い方が生まれるかもしれない。そうすればむしろ「採掘」のコストや採掘されたものを記録しておくコストが無い分だけ、ビットコインよりも低コストなはずである。(ビットコインは本来ない制約を設けるために余計なコストがかかっている。)ビットコインはそれら「他の物」が立ち上がるまでの期間だけ栄えるだろう。

なぜ今まで一貫してコンピュータ利用は制約を逃れて来たかというと、コンピュータの本質と関係ない制約を受けない新規参入者は、制約を受けない事による余剰の資源をほかの利点を伸ばすことに使い利便を増やしたからなのだろう。

コンピュータの本来持っている制約のなさに立ちふさがる物はみな、おそらく引きつぶされて行くのだろう。

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