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日本語は英語より速く読める?

 ところが、同時通訳稼業に就いてサイトラ、すなわち「Sight tranlation(黙読通訳)」をするようになって、この考えがコペルニクス的転回をとげた。

 サイトラとは、スピーカーが文章を読み上げるような場合、その原文テキストを事前に入手して、目は文章を追い耳はスピーカーの発言を確認しながら訳出していくやり方のことである。(中略)

 このサイトラを何度もやっているうちに、日本語のテキストからロシア語へサイトラする方が、その逆よりはるかに楽なことに気づいた。

(中略)

 表音文字だけの英語やロシア語のテキスト、あるいは漢字のみの中国語テキストと違って、日本語テキストは基本的には意味の中心を成す語根に当たる部分が漢字で、意味と意味の関係を表す部分がかなで表されるため、一瞬にして文章全体を目で捉えることが可能なのだ。(中略)

……黙読する限り、日本語の方が(ロシア語より)圧倒的に速く読める。わたしの場合平均6、7倍強の速さで、わたしの母語が日本語であることを差し引いても、これは大変な差だ。

米原万里「ガセネッタ&シモネッタ」(文春文庫)より
mmpoloの日記をとおして引用

まえからこの文章をさがしていたのだけど、やっと見つけた。米原万里によると漢字仮名交じり文は七倍はやく読めるのだ。ネイティブ補正は必要だけどそれでも速いのではないか。

他にも、前に同僚だったダニエルが同じようなことを試したことがあるらしい。同等の内容を英語と日本語で書いてそれぞれネイティブに読んでもらったら日本語の方がかなり速かったとか。彼は心理学をやっていた人なので、方法は信頼できるのではないかと思う。

あと、世界の中で映画を字幕で見るのはほとんど日本人だけなわけだけど、これも日本語は読むのが速いからではないかと言われている。

(昔は漢字はゆっくりなくした方がよいと思っていたけど、これがそれは待った方がいいと思うようになった理由。)

このあたりについて、もっとちゃんとした、心理学実験の結果はないのだろうかと思っているところ。

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非可逆性と量子力学について

純粋な量子力学の範囲内で非可逆性を導出できると思う。「純粋な量子力学」と断る理由は例えば状態の代わりに密度行列を使った量子力学の拡張で非可逆性があることはPrigogineらがすでに言っているが、それではないことを言っているからである。ここでは状態は波動関数である。

系が空間無限大まで広がっていて、粒子を外に向かって放出できるなら、非可逆性があることを示すのは簡単である。(それもPrigonigeと仲間、例えば田崎秀一さんとかがやっている。1粒子だけど。多粒子への拡張は核分裂の連鎖反応をモデルにすれば簡単だと思う。)

私は「それだけではダメだ、有限の空間でも非可逆性があることを示すことが出来ないと」と思っていたけど、そうでもないかも。現実の世界は実際に無限大で、熱力学的系は無限遠に向かって赤外線とかを放射するわけだから、有限系よりは無限に広がった系の方が現実であると言える。
(なぜ自分が有限の孤立系に固執してしまったか考えると、古典的な統計力学はミクロカノニカルを出発点にして、カノニカル、そしてグランドカノニカル、つまり開放された系に進むのだけど、その典範に足を取られてしまったのだなと思う。)

しかし、あえて有限サイズの孤立系という非現実な系を基準にして無限遠への赤外線の放出を摂動として考えるよりも、無限に広がった開放系を基準にして断熱して孤立系に近付けていくという考えの方が現実的なのではないだろうか。というか非現実を世界理解の基点に置くのは間違っているのではないかと考えるようになった。

このとき、放出された粒子の場(例えば熱い物体から出る赤外線、連鎖反応の中性子)などの波動関数の状態空間を外向き波に限る。つまりpoleが上半面に限る。これを合成して内向き波を作る事は出来ない。だから、このようなエネルギー的に連続な状態にcoupleした系は状態の空間を時間的に非対称にできる。事象は必ず減衰になる(時間発展オペレータの固有値の虚部が正定値)。

で、これで充分なのではないか?

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で以上はなぜ世界は時間非対称なのか?という哲学っぽい問題への答えなのだけど、pragmaticな問題としては今までのところ「熱力学的緩和に向かう非平衡/非定常系の量子力学的記述はできない」と思われていたわけだけど、以上を受け入れれば問題なくできるはず。

特に簡単なのは核分裂の連鎖反応とかだろうけど。あとは誘導放出とかの量子と光がかかわる問題とか。そこらへんの問題で実際になにか新しい予言ができるのじゃないかと思う。

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