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皮質はノイズを減らして情報を待ちかまえる

これから重大発表がされるというとき、聴衆はシーンと静まり返って話を待ち受ける。自分たちの発するノイズが情報をかき消してしまわないように。ここではCortexのニューロンも同じように情報がやってくるときにノイズを抑えて情報を待ち構えるのだという話をする。

例えば二つの視覚的stimulusがあるとしよう。刺激提示後 t [ms]からt+Δtまでのwindowに発火する確率をΔpとすれば、ニューロンがその発火によって運ぶ情報量は(単に相互情報量の定義に従って)
I = Σs p(s) log p(s) + (1-p(s)) log(1-p(s))
- p log p - (1-p) log(1-p)
- 1/2 log 1/2 *2
と定義される。ここで p =Σs p(s)

これは理想的な場合であるが、しかし実際のニューロンでは同じ条件の刺激に対して一回ごとに異なった反応を見せる。つまりニューロンの発火にはノイズがある。そして情報量はこのノイズによって減ってしまう。

発火のモデルを
p = p(s) + ε(t)
と考えよう。つまり刺激sにのみ依存する部分p(s)とトライアルに依存するノイズε(t)からなるものとする。何か別の脳内の過程やまったく関係ない外界からの感覚入力はこのような変動をおこすだろう。

このような情報伝達におけるノイズを定量化するのに適しているのがFano factor
ε^2/ p(i)
である。

このときこのモデルからεを知って引き出すことのできる情報量は
I = (p(1)+ε) log(p(1)+ε) + (p(2)+ε) log(p(2)+ε)
- (p(1)+p(2)+2ε) log(p(1)+p(2)+2ε)
+ (1 - p(1)-ε) log(1 - p(1)-ε) + (1-p(2)+ε) log(1-p(2)-ε)
- (1-p(1)-p(2)-2ε) log(1-p(1)-p(2)-2ε)
- 1/2 log 1/2 *2
一方、εを知らないときこのモデルから引き出すことのできる情報量は
I = p(1) log p(1) + p(2) log p(2) - (p(1)+p(2)) log(p(1)+p(2))
となる。その差は
ΔI = (1/p(1) + 1/p(2) - 4/(p(1)+p(2))) ε^2
であり、この分だけεを知らなければ減ってしまう。つまりこれが情報量に対するノイズの大きさとみなしてよい。

一般的な状況の例えばp(2)がp(1)の1/2だとかであれば、
ΔI = ε^2/3 p(1)
となりFano factorと定数を除いて一致する。
Figsilence1

さて、このFano Factor、ないしは情報に対するノイズの大きさを実際のサルの下側頭葉のspiking dataからプロットしたものが上図である。

上図を見ると、情報ノイズがstimulus presentationまえにその時刻に向かって減っていることがわかる。つまり脳は予測されたstimulus提示時刻にあわせて情報のtransmissionの邪魔になるノイズを、あらかじめ減らしていっている。t=x と t=0 を比較すると p=0.00X で確かに減っている。

そして、下図を見てもらいたい。Figs2この図からノイズが大きいほど正解率が低くなっていることがわかる。つまりこのノイズ低減は実際に正確な認識をする役に立っているものと考えられる。(p<0.05)

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ゲージ固定しなくもゲージ場の量子化が出来る方法について。

QEDについては物理的に同じ結果しか出ないが、non-Abelianなら物理的に新しい予言ができそうだ。その方法とは駆け足で言えば以下のようになる。

まずQEDのLagrangianは
L = - {1/4} (Fμν)^2 + e jμAμ.
である。場Aμに共役な運動量を
πμ = ∂L/∂'Aμ (3)
で定義し、
H(A, π) = πμ 'Aμ - L (2)
を導入する。ゲージ場の場合はπ0 = 0となって 'AμはπμとAμをつかって完全に表すことはできない。しかしそのような場合でもHは'Aμに依存しない形に書ける。(ここで 'AはAの時間微分。左のプライムは上点の代用。)

次にPoisson括弧は次のように定義される。
{ Aμ,πν} = - g μν (4)

ここまでは普通。

さて拘束条件π0 = 0 は全ての時間について成り立っていなくてはならない。従って 'π0 = 0, ''π0 = 0, '''π0 = 0, ... などの等式も成り立っていなくてはならない。つまり以上のHamiltonianで記述される力学と 'π0 = 0 が両立しなくてはならない。これをconsistency conditionという。
0 = 'π0 = {H, π0} = ∇π -ρ
これが新たな拘束条件であり、第二次拘束条件と言う。これらの拘束条件をφ0=0, φ1=0とおいておく。

ここまでは標準的に認められているDiracの拘束系の議論と同じ。

しかしここで道を分かって、あえてゲージ固定をしない量子化手法を提案する。まず単にPoisson括弧(4)を交換子に置き換える。
[Aμ, πν] = -i h g μν
(hは本当はバー付き。)そして全ての物理的な状態に対してconstraintを課す。(というか次の条件を満たすものを物理的状態だと定義する。)
π0|*> = 0
(∇π - ρ)|*> = 0
constraintと Hamiltonianは交換する ([φi , H] = Σj cjφj)ので、ある時刻でconstraintを全て満たしていればその後の任意の時刻でconstraintを満たしている。つまり物理的な状態は閉じている。

ただこれだけ。

ただこれの上でどうやって計算するかは結構ノントリビアル。しばしばどうやってよいか分からない状態になった。FP ghostは要らないけどきちんと同様のunitarityを守るのに必要な寄与は出てくる。QEDでは大して面白くないけど、non Abelian gauge fieldではちょっと面白い予備的結果がでてる。あと量子重力に適応すると面白そう。


ただし、これは第二類拘束系については使えない。つまり不完全である。むしろconventionalなDiracの方法がうまくいく。ただ、第二類と第一類をequal footingで扱う方法についても、目処はつけてある。

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