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1ループ有効作用のゼータ関数正則化

例として λφ4理論を使って説明する。1ループ有効作用は
  log det Λ
  ( Λx'x= (δ/δφ(x')) (δ/δφ(x)) A[φ] )
として与えられる。ここでA[φ] は作用である。
  A[φ] = ∫d4x { (∂μφ)(∂μφ)/2 - m2φ2(x) /2 - λφ4(x)/4! }
任意のオペレータΛとその固有値λi (i=0,1,...) に対しては(形式的に)
  log det Λ = ζ'(0)
  ζ(s) = Σn=0λn-s = tr Λ-s
が成り立つのでこれを使ってlog det Λを計算するのがゼータ関数正則化である。λφ4理論はWick rotationをしてEuclideanにして一辺の長さLの箱の中で考える。

例としてλφ4理論の4点関数の1ループ(ファイマン図形で言うとφ2>○<φ2みたいなやつ)は以下のように計算できる。
  (δ/δφ2(k')) (δ/δφ2(k))ζ'(s)|s=0
  = (∂/∂s) (δ/δφ2(k')) (δ/δφ2(k)) trΛ-s|s=0
  = lims→0(∂/∂s) (-s) tr{(δΛ/δφ2(k)) (δ/δφ2(k'))Λ-s-1}   (1)
ここで言及しやすいように tr{(δΛ/δφ2(k)) (δ/δφ2(k'))Λ-s-1}≡X と定義しておく。一方、ゼータ関数正則化を行わずに同じ項を計算すると
  tr{(δΛ/δφ2(k)) (δ/δφ2(k'))Λ-1}
である。これは普通に log 発散する。一方 XはこれよりもΛ-sだけべきが小さい。だからXの中のtraceを普通に∫d4k 積分で表すと被積分項のべきが k-sだけ小さくなる。従ってXは発散せず、無限大は1/sで置き換えられる。よって
  X = a s-1+ (有限部分)
である。これを使えば
  (1)式 = lims→0(∂/∂s) (-s) ( a s-1+ b) = - b
である。まあ有限項を定数部分までまじめに計算すると結構大変(紙2枚)だけど。

そしてほかのgraphや理論も1ループなら同様に有限になる。

Appendix
Λx'x= (δ/δφ(x')) (δ/δφ(x)) A[φ] を運動量kの空間で具体的に書くと次のようになっている。
  Λk'k= (k12+k22+k32+ k42) δ3(k'-k)+ m2δ3(k'-k) + λ(φ2)k'-k/2
特にゼータ関数正則化を考えている時は空間の一辺を有限の長さLにして離散運動量になっている。
  Λn'n= πL-1(n12+ n22+ n32+n42n'n+ m2δn'n+λ(φ2)πL-1 (n'-n)/2

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日経サイエンス06年1月号を読んだ。「創始者変異でたどる人類の足跡」が面白かった。鎌状赤血球やら嚢胞性繊維症などのただ一人にたどる事ができる突然変異から人類の拡散について考える論文。やはり世代ごとにハロタイプはだんだん短くなるらしい。

あと同誌が選ぶ2005年の「最優秀研究リーダー」にソウル大の黄教授が選ばれているのも、世の毀誉褒貶のうつろいやすさを思わせて、あはれである。

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イブは何人? --- 単為生殖の系統生存確率

「ミトコンドリア・イブ」というのは、実際人類の祖先がただ一人の女性だったというような話ではなく、ミトコンドリアのように片親からしか受け継がれない物は極端に少数の系統しか残らないという話だ。最初は「イブ」という一人を思わせる表現をしていたが、最近は「7人の女性」とか言っているらしい。

さて、何年か前に聞き齧ったところでは人類の数が一番減った時、その数はおよそ5万人であったらしい。多分数十から数百万年くらい前の事だろうと思う。取りあえずその状態が1万世代、20万年くらい続いたと適当に仮定してみる。どうも私の直感としてはこれで7つくらいの系統しか残らないのは少なすぎるような気がする。というわけで計算してみる。

仮にこの5万人の半分で2万5千の女性がみな二人ずつ子供を作ったとする。子供が両方とも男の子ならミトコンドリアは受け継がれない。片方なら1コピー受け継がれる。両方とも女の子なら2コピー受け継がれる。このミトコンドリアが1世代で消滅する可能性は両方とも男の子の時で1/4。2世代で消滅するのは・・・面倒からいいや。

一つの系統に注目してそれが n 世代めまでに消滅する確率を f(n)とすれば
  f(n) = 1/4 + f(n-1)/2 + f(n-1)2/4
となる。この手の漸化式は毎度ながら 1/4 + x/2 + x^2/4の曲線と45度線を書いてギザギザギザとやればいいんだけど、ここでは nを連続化して t して解く。fは t→大 で1に近付くから f= 1-x として微分方程式を書くと
  dx/dt = -x2/4
で、解は
  x = 4/(t-c)
ここで c はなんかのconstant。まあ、小さなnで結果が程々にあうようにチューンすればいいけど、どうせ n が一万ならどうでもよし。

これからすると、あるミトコンドリアが1万世代以内に滅ぶ確率が 1-4/10000 = 99.96% である。2万5千系統あっても、残るのは10系統のみ。意外と7に近い数になりましたね。

これはY染色体なんかでも同じなのでやはりあんまり系統は残らない。常染色体は交差を起こすけど個々の遺伝子になるとやっぱり同じように凄まじく絶滅していく。

あと、そういえばこれは苗字の生存なんかでも同じね。1000人の、みな苗字の違う村が100世代すると苗字は96%絶滅して40になるとか。(近似はさっきよりは不正確。)


補足1、「5万人1万世代」というのは根拠がないので信じない様に。むしろこの最小期の長さと人口とはミトコンドリアを含む全遺伝子の多型から推定するべき問題である。

補足2、全員が2人ではなく、生む数にfructuationがある場合はどうかも計算してみた。たとえばそれぞれ1/3の確率で1,2,3人生む時はどうか計算してみたら、新たにxの3次を無視する近似を加えたけど x ≒ 3/(t-c) だった。大した違いではないが多様性は減るようだ。

補足3、思い付いてから最初のうちは f(n) についての漸化式はexactだと思っていたけどちょっと違うようだ。この漸化式ではある系統の子孫の数が途中で人類の全個体数をこえるような場合も含まれている。このように近似が破たんするのは問題にしている系統の子孫の数が全個体数にくらべて無視できなくなった時である。しかし f(n)の漸化式は滅びる系統についての式であるが、全個体数にくらべて無視できなくなったあとに滅びてしまう確率は低いのでやはり、f(n)の精度はかなり高いと考える事ができる。

補足4、漸化式は一段ごとに二またに別れるかそのままか消えるかの、樹状のgraphに対応していると考えれば理解しやすい。樹木の末端までの長さがn以下のものの割合が f(n) 。

補足5、もし最初に100人いる遺伝子/苗字がどうなるか知りたければ (1-x(t))100 とすればそれが絶滅確率。

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考える脳 考えるコンピュータ

「考える脳 考えるコンピュータ」(ジェフ・ホーキンス 2005)を読了した。(一月経っているけど。)
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脳の一部ではなく、脳の全体についての理論で読んでいて「違う違う!」と叫び出したい気分にならない物に始めて出会った。

細部には自分の考えといろいろと違いがあって、それについて書いてみたいが、今日は大きな違いについて一つだけ書こう。

彼は、脳は記憶から予測をすると言っているが、基底核の記憶と新皮質の記憶を区別しなくてはならない。あとついでに言うと海馬の記憶がある。
新皮質を私は「世界の確率的モデルの獲得」と呼ぶが、それを記憶の一種と考えるのはかまわない。一方、基底核は次の瞬間に何をするべきか、どうすれば報酬を最大化できるのかについての確率的モデルがある。これも体験についての記憶の一種と考えてもよい。
この二つを区別する必要があるし、この二者が互いに相手を駆動する事によって始めてチューリング完全性が獲得できる。だから知能にはこれは必須である。また前者の計算論は確率論だけであるのに対して、後者の計算論は報酬に基づく強化学習であ。

彼の言っている「記憶による予測の枠組み」は私の考える新皮質の機能に相当する部分だけであって不十分であると思う。

しかし、8章まで読むとどうやらそれはわざとであったようだ。基底核に相当する理論がなければ自分から行動を決定する知能は再現できないのだが、むしろ彼はそのような部分はあえて捨てていると言うか、興味がないようだ。


しかし、この本もまた、翻訳の際に巻末の参考文献を取り除いている。本文の中の面白い話があってもソースを捜せないではないか。
なんて言うか読者としてナメられている感じがする。新聞のみならず日本の出版も読者をナメたところで成立してるのとちゃうのかとか僻んでみたりして。

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メモ: ゼータ関数計算のheat kernel methodとは

ゼータ関数計算のheat kernel methodとは、
λn(n=0, 1, ...)をあるoperator Aの固有値として
  ζ(s) = Σn=0λn-s
を計算したい時、
  ζ(s) = 1/Γ(s) ∫0dt ts-1tr e-At
として、この e-Atを求めるのに伝熱方程式
  ∂ψ/dt = -Aψ, (ψ(t=0) = 1)
を使い計算する方法のことである。(Aは特にHermitianなどでなくともよい)。
よく知らんけど想像するところ多分。

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人命一人当たりの政策コスト

まえにテレビのチャンネルを変えていたら、放送大学で面白い番組をやっていた。11月19日の午後3時台。
環境マネジメント('02) 第8回「規制と費用便益分析 経済分析の倫理的特徴」岡敏弘だ。

環境規制によって救われる人命もある。しかし一方規制には費用がかかる。そこで一人の命を救うのに必要な金額を計算していた。最後の5分しか見れなかったので正しくキャッチできたか心もとないけど、そこで挙げていた数字を記憶とメモから再現する。

  クロルデン 54000万円
  乾電池水銀規制 2000万円
  ダイオキシン緊急対策 750万円
  ダイオキシン恒久対策 1億5000万円

「緊急対策」は数年前にごみ焼却炉のダイオキシンが問題になった時に特に排出の大きな炉を緊急に止めたものの効果対費用。
ほかにも色々面白い数字が挙げられていたが、記憶しきれなくて残念。それに途中から見たために、行政が支出する費用のみか、それとも規制にともなって民間が負担する金額を含んでいるかは分からなかった。

この伝で行くと狂牛病なんて、一人当たり1000億超になるはず。そもそも、一人の人間が一生に払う税金の額を越えた対策をするのは馬鹿馬鹿しいよね。というより、そういうことに使う分、もっと効果の高い対策に使えば助かった別の命が無駄になるわけで。(これは私の意見。)

ほかには二酸化炭素排出を1t抑制するのに必要なコストなども挙げていた。

  ハイブリッド車 4万円/t
  現在の日本の限界費用 3万円/t

こういう役に立つ研究をしている人は確かに居るわけで、なぜこういう数字が新聞なんかにのらないのか。新聞はなにをしているのか。

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メモ: 面白い関係式

岩波数学辞典第3版 539ページより

Mの基x1, ... ,xmの双対基をx1*, ..., xm* (Q(xi,xj*) = δij)とする。M* = Σi xi* ZをMの双対格子(dual lattice)と言う。Qに対しθ級数を
  θQ(u,M) = Σx∈M exp(-πu Q(x)), Re u>0
で定義すると
  θQ(u,M) = (um/2 D(M)1/2 )-1 θQ(u-1, M*)
となる。ξQ(s,M) = π-s Γ(x)・ζQ(s,M)と置く時、上の関係式から関数等式
  ξQ(s,M) = D(M)-1/2・ξQ(m/2-s, M*)
が導かれる。


シータは普通もっと丸い方を使います。

これって(局所)場の理論の双対性に似ていて面白い。(ってか調べたらなんか出てくるはず。)

ゼータ関数まわりは本当に面白い。自分は今までゼータ関数を全く勉強した事がなかったんだけど、あたかもすでにそこにあったけど使われてなかった脳の部分を使うような感触ですごく面白い。

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真空のエネルギーとゼータ関数

  E = 1/2 Σk √(k2+m2)

これが場の理論の真空のエネルギーである。(連続だと (2π)-3 ∫d3x d3k √(k2+m2)/2ね。) ここで k = πL-1 (n1, n2, ... ,nd) で (ni = 1,2,...)。これはどうしようもないくらい紫外発散している。これにゼータ関数正則化を適用したらどうなるか計算してみる。(結果からすると「正則化」と呼ぶべきか迷うけど。)

まず空間1次元で質量 m がゼロのときは
  E = 1/2 Σn πL-1 n = (π/2L) ζ(-1)
である。ここでζ(s)はリーマンのゼータ関数ζ(s) = Σn=1 n-sね。Lは空間の大きさ。ζ(-1) = -1/12 だけどそんな事と関係なく E は L→∞ で0になる。

で、次はもっとrealisticな空間3次元で質量のある場合を扱いたい。その計算にはEpsteinゼータ関数を使う。次元をdとして
  Zd(M; s) = Σn1=1 ...Σnd=1 {n12+n22+...+nd2+M2}-s/2
が Epstein ゼータ関数である。文献によってはべきを -s/2 ではなく-sと定義する物がある。また定数がM=0であるもののみを Epstein ゼータとよび M がゼロでないものは Epstein-Hurwitz ゼータと呼ぶ事もある。記号も一定してはいない。

で、まずは3次元で質量無しのとき。
  E = 1/2 Σn πL-1 √(n12 + n22 + n32) = (π/2L) Z3(0; -1)
で Zd(0; s) は s=dのみにpoleを持つので[1] Z3(0; -1)の値がいくらであるかによらずEは L→∞ で0である。

最後に、3次元で質量ありのとき。
  Zd(M; s) = Md-s πd/2 / Γ(s/2) {Γ((s-d)/2) + 2Σn1=-∞...Σnd=-∞ K(p-s)/2(2πM√(n12+...+nd2)) (2πM√(n12+...+nd2))-(p-s)/2}
だだし、和はn1=...=nd=0を除く[1]。ここでKn(z)は変形ベッセル関数。というようなごたごたした形はどうでも良くて、変形ベッセル関数は大きなz で Kn(z) ~ (π/z)1/2 e-z とふるまうのでMが大きなとき括弧の中の第二項は無視してよい。
  E = (π/2L) Z3(mL; -1) ∝ L-1 (mL)4
で、つまり単位体積当たりm4のエネルギーだと。なんか気持ち悪いけど。

[1] J. Ambjφrn and S. Wolfram, Properties of the vacuum.1. Mechanical and thermodynamic, Annals of Physics 147 (1983) 1-32.のAppendixに導出があります。ここで読めます。

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