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イブは何人? --- 単為生殖の系統生存確率

「ミトコンドリア・イブ」というのは、実際人類の祖先がただ一人の女性だったというような話ではなく、ミトコンドリアのように片親からしか受け継がれない物は極端に少数の系統しか残らないという話だ。最初は「イブ」という一人を思わせる表現をしていたが、最近は「7人の女性」とか言っているらしい。

さて、何年か前に聞き齧ったところでは人類の数が一番減った時、その数はおよそ5万人であったらしい。多分数十から数百万年くらい前の事だろうと思う。取りあえずその状態が1万世代、20万年くらい続いたと適当に仮定してみる。どうも私の直感としてはこれで7つくらいの系統しか残らないのは少なすぎるような気がする。というわけで計算してみる。

仮にこの5万人の半分で2万5千の女性がみな二人ずつ子供を作ったとする。子供が両方とも男の子ならミトコンドリアは受け継がれない。片方なら1コピー受け継がれる。両方とも女の子なら2コピー受け継がれる。このミトコンドリアが1世代で消滅する可能性は両方とも男の子の時で1/4。2世代で消滅するのは・・・面倒からいいや。

一つの系統に注目してそれが n 世代めまでに消滅する確率を f(n)とすれば
  f(n) = 1/4 + f(n-1)/2 + f(n-1)2/4
となる。この手の漸化式は毎度ながら 1/4 + x/2 + x^2/4の曲線と45度線を書いてギザギザギザとやればいいんだけど、ここでは nを連続化して t して解く。fは t→大 で1に近付くから f= 1-x として微分方程式を書くと
  dx/dt = -x2/4
で、解は
  x = 4/(t-c)
ここで c はなんかのconstant。まあ、小さなnで結果が程々にあうようにチューンすればいいけど、どうせ n が一万ならどうでもよし。

これからすると、あるミトコンドリアが1万世代以内に滅ぶ確率が 1-4/10000 = 99.96% である。2万5千系統あっても、残るのは10系統のみ。意外と7に近い数になりましたね。

これはY染色体なんかでも同じなのでやはりあんまり系統は残らない。常染色体は交差を起こすけど個々の遺伝子になるとやっぱり同じように凄まじく絶滅していく。

あと、そういえばこれは苗字の生存なんかでも同じね。1000人の、みな苗字の違う村が100世代すると苗字は96%絶滅して40になるとか。(近似はさっきよりは不正確。)


補足1、「5万人1万世代」というのは根拠がないので信じない様に。むしろこの最小期の長さと人口とはミトコンドリアを含む全遺伝子の多型から推定するべき問題である。

補足2、全員が2人ではなく、生む数にfructuationがある場合はどうかも計算してみた。たとえばそれぞれ1/3の確率で1,2,3人生む時はどうか計算してみたら、新たにxの3次を無視する近似を加えたけど x ≒ 3/(t-c) だった。大した違いではないが多様性は減るようだ。

補足3、思い付いてから最初のうちは f(n) についての漸化式はexactだと思っていたけどちょっと違うようだ。この漸化式ではある系統の子孫の数が途中で人類の全個体数をこえるような場合も含まれている。このように近似が破たんするのは問題にしている系統の子孫の数が全個体数にくらべて無視できなくなった時である。しかし f(n)の漸化式は滅びる系統についての式であるが、全個体数にくらべて無視できなくなったあとに滅びてしまう確率は低いのでやはり、f(n)の精度はかなり高いと考える事ができる。

補足4、漸化式は一段ごとに二またに別れるかそのままか消えるかの、樹状のgraphに対応していると考えれば理解しやすい。樹木の末端までの長さがn以下のものの割合が f(n) 。

補足5、もし最初に100人いる遺伝子/苗字がどうなるか知りたければ (1-x(t))100 とすればそれが絶滅確率。

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